
水洗式 仮設トイレの給水・排水工事 施工基準ガイド
水洗式仮設トイレは、建設現場やイベント会場など、多人数が使用する現場においては高い衛生環境を実現できる仮設衛生設備です。安全に使用するためには、給水と排水の施工を正しく行うことが基本です。
本記事では、水洗式仮設トイレの特徴、給水・排水工事の手順や安全対策などを詳しく解説します。
水洗式仮設トイレの概要
水洗式仮設トイレは、給水によって洗浄、排水で下水道または浄化槽へ排出する形式を兼ね備えた、家庭用トイレと同様の構造を持った仮設衛生設備です。設置を検討する際は、水洗式の特徴や給水と排水の構造について知ることが大切です。

水洗式のメリット
水洗式の最大の特徴は、排水で汚物をトイレ外部へ流し切ることです。
汚物がトイレ内部に残らないため、臭気の軽減かつ害虫の発生防止し、快適な衛生環境を実現することができます。また、使用感は家庭用トイレと同様のため、特に長期的・常設する場所では、利用者の満足度を高めることができます。
水洗式のデメリット
水洗式には、洗浄用の給水と排出用の排水ができる施工が必要不可欠です。
水道および下水道が整備されていない場所での使用は施工困難となるため、使用できない場合があります。また、排水には汚物が流れるよう、高低差のある排水経路の確保が基本となります。
費用面では、汲取り式に比べ、初期費用(給排水工事)+ランニングコスト(水道代・下水道使用料)により負担増となります。特に凍結・寒冷地域では、配管凍結や便器破損などにも注意が必要です。
▼ 凍結に関する記事はこちら
仮設トイレの凍結防止対策について | 旭ハウスオンラインショップ
給水工事について
給水工事の計画は、「水源の確保 → 配管経路の計画 → 逆流防止の思慮 → 通水の試験」の順で行います。
特に逆流防止を思慮する際には、各自治体が規定している『水道水の汚染を防ぐ責任(水道法)』を事前に確認するようにしましょう。

給水元の確認
給水元を確保する際には、以下を必ず確認するようにしましょう。
・ 給水元(水栓・仮設水道)が特定できていて、給水元の管理者・施主の使用許可を得ている
・ 既設の 上水道(給水栓)が近くにあるか
給水施工の設計
人や重機の動線を避けることが基本です。また、ホースはVP管(硬質塩化ビニール)で保護すると長持ちします。
給水トラブルの防止
給水工事において、最も多いトラブルは「水圧・水量不足による洗浄不良(流水量が少ない、紙残りや詰まり)」です。既存水栓の水圧不足や長いホースによる水圧損失、手洗い場・散水設備による分岐共用などが原因となる場合があります。設置を検討する際は、必ず事前確認をしましょう。
給水工事の手順
■ 仮設トイレ本体へ接続する
給水するためには、仮設トイレ背面にある止水栓に給水ソケット 13mm (呼び径13 /1/2インチ)を接続します。ただし、ホースを使用する場合は、家庭用散水ホースは使用しないでください。

★ 給水ソケット13mm(呼び径13 /1/2インチ)は、給水配管の標準サイズです
■ 実際の給水施工例

排水工事について
排水工事には、主に「自然流下」の排水方法が使用されます。
工事を行う際には、『排水先の有無や位置』『現場の勾配(高低差)と距離』が重要となります。
自然流下
ポンプなどの動力を使用せず、現場の勾配と水のみで汚物を流す排出方式です。
一般的な排水管勾配は1/100~1/150とされており、勾配が緩いと詰まりやすく、急すぎると水だけが流れて汚物を取り残す場合があります。また、勾配による自然な水の流れで汚物を流せるため、電気不要かつ長期使用ができる点は大きな利点です。
なお、一般的な住宅や商業施設の排水は1/100が基本となり、1/150は配管スペースに余裕がない場合などに選択されます。
一般的な排水管の勾配の目安表 ( 汚水排水 )
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排水トラブルの防止
排水工事のトラブルで懸念することは「排水管の固定・支持不足」です。
しっかりとした施工ができていないと、天候不良時には急な流れの悪化やズレによる逆勾配、さらに自然流下では勾配不足を招く原因となります。また、人や車両の往来が多い現場では、振動等の干渉が破損のリスクを高めるため、施工時には、埋設または保護材を使用すると効果的です。
排水工事の方法
■ 排水先の確認
排水工事では、汚水や汚物をどこへ排水させるかによって工事内容が大きく変わります。事前に排水先の種別について確認するようにしましょう。
主な排水先の種別・主な設置場所での特徴と注意点の表

■ トイレの排水仕様を確認する
仮設トイレの排水仕様は、主に「壁排水」「床下排水」の2種類があり、排水の取り出し口は仮設トイレ背面にあります。これらの仕様は、便器の種類(和式・洋式)によっても排水管サイズ・排水位置が異なります。各トイレの排水仕様を事前に確認するようにしましょう。

【 排水位置 】 左 : 壁排水 仕様 / 右 : 床下排水 仕様
● 洋式 : VU75 ( 壁排水 ) / VU100 ( 床下排水 )
● 和式 : VU75 ( 壁排水 ・ 床下排水 共通 )
● 小専用 : VU40 ( 壁排水 ・ 床下排水 共通 )
▼ 旭ハウス工業 『 AUトイレ 』 参照
「 水洗式トイレ 」に関する商品一覧 | 旭ハウスオンラインショップ
■ 実際の排水施工例
< 壁排水 仕様 >
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< 床下排水 仕様 >
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知っておくべきこと
給排水工事は上水道および下水道を使用することから、国が定める法律と自治体が定める条例が深く関係してきます。

国の法律 ( 給水 ・ 排水 )
国が定める法律には、主に2つの基礎となる法律があります。

■ 水道法
水道法とは、国民に安全で清潔な水を安定して供給するための法律です。
家庭等への届けられる清潔な水は、上水道(水を供給する給水管)から供給されています。水洗式仮設トイレへ給水を行う場合、上水道を使用した工事を行うため、水道法が適用されます。
■ 下水道法
下水道法とは、汚水を適切に処理し、生活環境と水環境を守るための法律です。
家庭等で出る排水のほぼ全てが、下水道を使用して排水されます。水洗式仮設トイレから排水を行う場合、下水道に排水するための工事を行うため、下水道法が適用されます。
自治体の条例 ( 給水 ・ 排水 )
国で定める法律に基づいて、自治体が定めている条例があります。また、条例は自治体によって異なるため、あらかじめ設置する場所の自治体へ確認すると良いでしょう。

■ 水道事業条例 ( 給水条例 )
水道法に基づき、上水道の使用方法・給水工事のルールを定めた条例です。
規定内容は、上水道の給水装置(洗浄水を供給するための設備一式)の基準や施工ルールがあり、他にも、自治体指定の給水工事事業者のみが施工可能なことや水道料金・契約に関する事項などがあります。
■ 下水道条例
下水道法に基づき、公共下水道の使用方法・排水工事ルールを定めた条例です。
規定内容は、排水可能な水の種類(汚水・し尿など)や排水設備の基準のルールがあり、他にも、自治体指定の排水工事店のみが施工可能なことや下水道使用料・契約に関する事項などがあります。
基準に満たない場合は、管理者に使用・維持管理の責任が生じます。
他にも配慮すべき点
耐震性のある設置
トイレ本体が自然災害等で転倒や移動が発生すると、給水・排水の配管が外れたり、破損したりする可能性があるため、配管部分の繋ぎ目等には糊付けが必要となります。また、地上に配管が出ている場合は、通行によるつまずきで外れる可能性もあるため、カラーコーンなどでの注意喚起をおこない配管部分には保護材等で対策をしましょう。
作業者の保護
給排水工事では、急な水噴出や転倒、汚水接触などの危険が伴います。作業時は、ヘルメットや防水手袋、安全靴、ゴーグルなど、身を守るための保護具を着用しましょう。特に給水工事においては、元栓を確実に閉めた上で、少量ずつ通水することが大切です。また、作業後には手洗いや消毒などの衛生管理を徹底することで、事故や体調不良の防止に繋げることができます。
工事後のメンテナンス
給排水工事が完了した後、使用と時間が経過するに連れて、配管のズレや部品の劣化等が生じてくる可能性があります。これによりロータンク本体・便器付近からの水漏れ、完全に止水できないなどの問題が生じます。日常点検としては、『給水・排水・臭気・配管・清掃』を5つのポイントとして確認するようにしましょう。
【 まとめ 】
正しい給排水工事を行うことで、現場の快適性と安全性を向上させることができます。
事前計画から適切な勾配設計、安全対策、定期点検により、長期的に安定した運用を可能にできます。









